イ ン カ 帝国 と イ ン カ 文明 






インカ帝国とインカ文明

 インカとは部族の名称

 インカとは、元来クスコ周辺に住んでいた部族の名称で、この部族が中心となって大帝国が建設された。アンデス世界では文字の記録がないので、神話から推測すると1200年頃ケチャア族の中のインカ族が中央アンデスのクスコに地方的小国家を作ったと言われている。

 13人の皇帝が即位

 初代皇帝のマンコ・カバックから13人の皇帝が即位した。15世紀の中頃、北方のチャンカ族に勝利すると、インカ族は急速に拡大し、第9代のパチャクチ皇帝はその在位33年間に1000倍近くまで拡張。第11代のワイナ・カパックは更に領土を拡大し、北はコロンビア、南はアルゼンチン、チリー北部まで、南北の距離4000kmに及ぶ大帝国を作り上げた。

 征服者ピサロの奸計に屈する

 ワイナ・カパックの死後、皇位継承を巡って争いが起こり兄弟で内戦が起きた。しかし、丁度この頃、黄金郷(エルドラド)を求めてやって来たスペイン人フランシスコ・ピサロの奸計により、内戦に勝利した13代皇帝アタワルパを幽閉し、部屋一杯の金銀を身代金を差し出したが許されず処刑された。これにより1533年事実上インカ帝国は滅亡した。ピサロは、その後インカの首都クスコに侵攻し、略奪を開始し金は延べ棒に変えられ本国に送られた。
 
 破壊した石組みの上に教会が作られる

 黄金で輝く太陽の神殿は破壊され、その石組の上にサント・ドミンゴ教会が建てられた。1535年ピサロはリマに新しい首都を建設した。その後もインカの抵抗は続いたが最後の皇帝トパック・アマルが処刑されることによりインカ帝国は完全に消滅した。

 
 インカ文明の特徴

○ アンデスの山間部や高原地帯で発展し、ジャガイモやサツマイモを主食とした。トウモロコシを栽培していたがチチャという酒の原料に使った。

○ 貨幣は無く物々交換によって経済活動が行われていた。

○ 文字を持たなかった。文字の代わりに縄の結び目の形や数で数字を記録するキープが使われた。

○ 鉄器を知らなかった。青銅器もほとんど利用されなかったが金や銀の鋳造は発達していた。

○ 車輪を知らなかった。運搬道具としての荷車等は作られず、荷運び用にはリャマが使われていた。

○ アルパカの毛は織物の原料として使われた。

○ 全国各地に道路網を整備し、組織化された行政組織を持っていた。

○ 優れた建築技術や灌漑工事の技術を持ち、都市が整備された。