六日目  アララト山はアルメニアの人々にとっては心のふるさと

  アルメニアの平均標高は1,800m  

 アルメニアは国土の90%が1,000mから3,000mの高地にあり、首都エレヴァンは標高1,000mのところにある。現存する世界最古の町のひとつとも言われ、歴史のある町です。ソ連との関係が深いので典型的な共産国家らしい国柄や街並みかと予想していたが、ヨーロッパ的な美しい街並みに驚かされる。かってローマ帝国の支配下にあって、世界最初のキリスト教国となったが、その後はトルコやソ連の支配を受けて厳しい歴史を歩んでいる。

  「カスカード」を登る

 今日最初の見学先は、首都エレヴァンにあるソ連時代に造られた巨大な階段のモニュメント「カスカード」である。カスカードとは滝という意味で572段の階段が滝のように見えるからと言われている。今回の旅行チームの中で一番若いおそらく24,5歳の男性と私は歩いて登り、他の人たちは、階段の内部にあるエスカレーターで上に登る。天気も良く、空気も澄んでいたので長い階段もそれほど苦にはならない。階段下の広場や途中にはいろいろなオブジェが置かれており、楽しみながら登ることができる。下の方では見えなかったアララト山とエレヴァンの街が、次第に見え始め足にも力が入る。エスカレーターで登った人たちが出口から出てくるのと、私が登り切った時がほぼ同時になり、登るのが早いね!と誉められた。お世辞と分かっていても少し気を良くする。

  念願のアララト山を望む 

 私にとってエレヴァンでの大きな目的の一つはアララト山を見ることであったので、青空のもと少し霞んでいたが、遠くに聳え立っているアララト山を見て、夢の一つがかなえられたとの思いで嬉しくなる。この町エレヴァンの人口は約130万人近くあり、紀元前から栄えてきたとされているが、過去にトルコでの大量虐殺事件や、戦争で逃れて来た人たちが大勢移住してきて大きな町になったようだ。そしてこのアララト山も今はトルコ領に組み入れられてはいるが、目の前に聳え立っている山を、自分たちの心のふるさとのように親しんでいるといわれている。

  ホルヴィラップ修道院
 
 次にアララト山が、もっと近くで綺麗に見えると言う「ホルヴィラップ修道院」に向かう。エレヴァンの郊外へ向かい、ほぼ1時間くらいで修道院の麓に着く。アララト山がくっきりと見え、まず全員で山を背景に記念撮影。徒歩で小高い山にあるホルヴィラップ修道院に登る。今日も紺碧の空を背景に、石造りの修道院が映えて美しい。

 ホルヴィラップとは「深い井戸(穴)」と言う意味で、3世紀末にアルメニアをキリスト教化した聖グレゴリウスが幽閉され、今もその穴が礼拝堂の祭壇近くに残っている。裏手の小高い丘に十字架が立っており、ここからは山も周辺一帯も一望できる。大アララト(5,137m)の隣には小アララト(3,896m)、この二つの山がペアで眼前に迫っており、エレヴァンの人々の心のよりどころになっていることが実感できる。

  総本山「エチミアジン大聖堂」

 次にエレヴァンの西20km程の所にあるアルメニア使徒教会の総本山「エチミアジン大聖堂」の町に向かう。ここは4世紀創設という長い歴史を持ち、世界遺産にも登録されている。エチミアジンという名前は「神の唯一の子が降りた」と言う意味らしい。広大な敷地に聖堂や神学校もある。キリストの脇腹を刺したと言われるローマ兵の槍先や、ノアの箱舟の破片なども、ここにある博物館に展示されている(現在はニューヨークでの展示に貸し出されているらしい)。

 昼食はエレヴァンの街外れにあるレストランでいただく。土中にある窯で焼いた薄いパン(インド料理のナンより少し薄い)に、いろいろな野菜や肉類を挟んで食べる。パン焼きの実演も見せてくれ試食もさせてくれる。香ばしくて美味しい。

  ガルニ神殿
 
 その後、バスを少し走らせ、ガルニ神殿に向かう。まるでギリシャのパルテノン神殿のように円柱の上に屋根を乗せたこの辺りでは珍しい建物である。周囲を見渡す峡谷の上に紀元前3世紀頃建てられた要塞で、アルメニア王の夏の離宮として使われていたらしい。浴場跡の遺跡もあり、かなり不思議な建物だ。一度地震で倒壊したが1930年頃再建されたらしい。

  ゲガルド洞窟修道院
 
 ここから更に山中深くバスを走らせ険しい岩山の谷を縫うように走るとゲガルト洞窟修道院がある。ここは主聖堂は屋外にあるが、その他の教会堂等の部屋は、岩山を上から掘り抜いて作ったという。大変な難行だったろうと思う。その一室で、コーラス隊の合唱を聞かせていただいた。洞窟内の響きは、ハーモニーの良さもあり、幻想的な至高の美しさを醸し出していた。

  アルメニアの民謡
 
 夕食はエレヴァン市内のレストランでいただく。この間、アトラクションとして、アルメニアの民謡を、太鼓、カノン(弦楽器)、ドゥドゥク(笛)の三人編成で大変興味深く聞かせていただいた。

 食事後、共和国広場の前を通ると、丁度色とりどりのライトで照らした噴水ショーをやっており、今日最後の見ものを堪能した。ホテル到着は9:30、明日も8:00出発なので、あわただしく荷物を整理し、シャワーを浴びて就寝する。


カスカードの上からエレヴァンの街を見る。遠くにアララト山が霞んで見える。 カスカードの公園にあるオブジェ
カスカードの公園にあるオブジェ カスカードの公園にあるオブジェ、これは何? 他にもたくさんある
カスカードの階段の内部
エスカレータがある
アララト山とホラヴィラップ修道院を背景に
アララト山とホラヴィラップ修道院
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ホラヴィラップ修道院の内部
ホラヴィラップ修道院 ホラヴィラップ修道院の内部
ホラヴィラップ修道院の丘の上にある十字架塔 エチミアジン大聖堂の門
エチミアジン大聖堂敷地内の施設 エチミアジン大聖堂の宝物館にあるキリストを刺したと言う槍の先
エチミアジン大聖堂の宝物館にあるノアの箱舟の破片 パン焼のおばさん
ガルニ神殿 ガルニ神殿にある浴場の跡
ガルニ神殿の前で女学生を撮影 ゲガルド洞窟修道院と岩山
ゲガルド洞窟修道院の内部 ゲガルド洞窟修道院内で合唱
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